胃がんの話

胃がんは全世界で年間約100万人が罹患するとされており、うち日本では約11万人を占めています。胃癌の死亡率は徐々に減少してきていますが、全悪性腫瘍の中で、今尚胃がんは死亡率・罹患率ともに高い状況です。日本におけるがん統計の死亡部位別では、胃がんは男性では第2位、女性では第3位を占めています。
胃がんの危険因子は、幼少時期のヘリコバクター・ピロリという細菌(以下ピロリ菌と略す)の感染により持続性の萎縮性胃炎をもたらし、腸上皮化生から胃がんに至ると考えられています。ピロリ菌の除菌治療が胃がんの予防に役に立つとも考えられており、除菌することで胃がんの発癌率は1/3程度に減少すると言われています。
胃がんの症状は、進行胃がんであれば、食べ物のつっかえ感、食欲不振、急激な体重減少、胃の痛み、貧血症状などがみられることがありますが、早期の段階ではほとんど症状がないため、早期発見するには定期的な検診が必要となります。現在は経鼻内視鏡も発達して画質も従来の経口内視鏡と遜色ないほどになっています。経鼻内視鏡であれば咽頭反射が強い方でも楽に内視鏡検査ができますので安心してご相談ください。


進行胃癌(3型)です。この時点で発見されると外科的手術が必要となります。


早期胃癌(0-Ⅱc型)です。この時点で発見できると内視鏡的切除術が可能です。→基幹病院でESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)施行し治癒切除できました。

ピロリ菌の話

胃の中にいる細菌で、胃潰瘍の約70-80%、十二指腸潰瘍の約90%に関わっていると考えられています。ピロリ菌には日本人の約60%が感染しているといわれていますが、感染経路は幼少時の井戸水などの衛生環境や人から人への経口感染(母親から子供への感染)と考えられています。現在日本では衛生環境の向上によりピロリ菌保菌者は減少傾向にありますが、依然として高齢者では高率に感染しており、胃がんには注意が必要です。

検査方法は

などがあります。

※当院ではピロリ菌の存在診断として血液抗体法か尿素呼気試験法を用い、除菌判定として主に尿素呼気試験法を用いています。

今までは胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後にしか除菌の保険適応はありませんでしたが、平成25年2月から保険適応範囲が広がり、慢性胃炎がありピロリ菌感染が確認されれば除菌の保険適応になりましたので検査されたことがない方は一度ご相談ください。
治療は現在2次除菌まで保険適応になっており、胃酸を抑える薬と抗生物質2剤を7日間服薬する方法で、1次除菌の成功率が70~80%、これに失敗しても2次除菌の成功率でも80%程度あります。もし他院で2次除菌までしたが失敗されたという方やペニシリンアレルギーがあるため除菌治療がうけられないという方がいましたら、保険外診療になりますが除菌方法がありますのでご相談ください。

大腸がんの話

年齢別にみた大腸がんの罹患率は、50歳代付近から増加し始め、高齢になるほど高くなり、男女共に増加傾向にあります。大腸がんの死亡率は男女とも1970年代から急増しており、脂肪摂取量の増加と関連があると考えられています。日本におけるがん統計の死亡部位別では、大腸がんは男性で第3位、女性で第1位を占めるまでになっています。
大腸がんの自覚症状は、大腸がんのできる部位によって異なります。S状結腸から直腸に進行がんが発生すれば、血便、便柱細少化、残便感、腹痛、下痢と便秘の繰り返しなど便通異常がおこり易く、肛門から離れた部位の進行がんでは血便を自覚することは少なく、貧血症状で気がつくこともあります。また嘔吐などのがんによる腸閉塞症状や肝転移で発見されることもあります。早期大腸がんではほとんど症状はありません。
大腸がんは、ポリープから癌化することが多いと考えられています。このためポリープの段階で内視鏡的に切除すればがんの発生率はかなりの頻度で防げますので、当院では大腸内視鏡検査時ポリープを発見すれば大きさに関わらず同意のもと極力切除するよう心掛けています。もし他院でポリープを指摘されたが小さいため切除されていないという方はお気軽にご相談ください。大腸はすべてのポリープを切除しクリーンコロン(きれいにした大腸の意味)にしておけば3年に1度の大腸内視鏡検査で十分と考えます。


S状結腸にできた進行大腸癌(2型)です。この時点で発見されると外科的手術が必要となります。


S状結腸にできた早期大腸癌(0-Ⅰp型)です。この時点で発見できると内視鏡的切除術が可能であり、内視鏡的に治癒切除できました。